眼鏡を作る時に必要な視力測定からの装用度数決定に必要な検査技術と、
それに伴い見落とされがちな傾聴技術というものを解説していきます。
検査初心者や、これから教えてもらう方にも
検眼マニュアル検査と傾聴式検査は違うことを理解できるように説明して行きますね。
視力検査の極意とは、求められる「見え方」に対してどんなメリット・デメリットがあり
楽に見えやすくするか?にあります。
筆者紹介
- カラスイという名義で日常心理学を発信中
- 育成が趣味で出会ったメンティー 500人オーバー
- 眼鏡業界10年オーバーで、「早い!上手い!」がモットー
この記事は、こんな方におすすめ
- これから視力測定を学ぼうとしている
- 最近視力測定を学び始めている
- イマイチ処方の法則がわからない
今回は視力測定の中でも比較的多いとされる『近視』の処方についてお話していこうと思います。
この記事を最後まで読むことで、近視に対する処方の法則を理解することができ、
明日から実践で即使うことができます。
⬇️参考資料
目次 調べたいところを選んでね
「近視眼鏡の定義」からおさらいします
知っている方は飛ばしてOKです。
まあ、『網膜の手前で像を結ぶ』とかのやつですね。
難しく考えずに『遠く見えない』『近く見える』でOK。
近視眼鏡のレンズはどんな特徴があるの?
ここも知ってたら飛ばしてOKです。
取り扱い店にもよりますが一般的には、
1.55AS 1.60AS 1.67AS 1.74AS 1.76ASのレンズがあります(プラスチック)。
ちなみにガラスは1.90まであるみたいですが、ガラスレンズの特徴は
ポイント
『鮮明感がプラスチックより高い』
『割れやすい』
『熱に強い』
ぐらいでOK。
プラスチックは1.60と1.67は軽くて鮮明感が高いくらいの認識でOK。
薄く眼鏡を仕上げたいなら、フレームのサイズと目の瞳孔距離で変わるので
一概に1.74が薄く仕上がる訳ではないです。
「近視眼鏡処方テンプレート」を紹介します
前置きが長くなりましたが、ここからが超大切なのでよろしくお願いします。
まず近視は、
完全矯正値(その人の目が持つ力で1番見えるレンズの数値)が
MAX10として8割くらい入れるのが一般的です。
例題で解説しますね。
KB(現用眼鏡)がない場合、
S-4.00のレフ値で矯正値がS-3.75とした場合
S-3.25ぐらいから入れて様子を見ます。
ここで大事になるのが、
あくまでこの処方は一般的な基準なだけで
お客さんが望む視力の度数とは別だという認識が大切です。
どういうことかというと、
そこにはお客さんの希望の背景(主訴)が含まれていないからです。
⬇️ダメな例
問診時
お客さん(O)「遠くが見えないんです」
検査者(K)「わかりましたー」
これではどこを目標にしてらいいかわからないまま検査が始まります。
⬇️主訴を聞き出す聞き方の例
O「遠くが見えないんです」
K 「どのくらい遠くですか?運転免許通るくらいですか?」
このくらいは聞き返しましょう。
こう聞くとお客さんが実際見たいものをイメージし出すので、
続いて質問をします(20代ならここで検査開始してもOK)。
40代になると老眼が入る(早い人だと20代でも)ので、
今回の眼鏡で「近くは眼鏡を外す」のか「掛けたまま見たいのか?」を聞き出す必要があります。
ちょっと加入数値強い気もしますが、これをうっすら頭に入れておけば遠くは望む視力に決めてから
年齢別加入を計算して、どれだけ手元をフォローできるか考えて処方しましょう。
近視処方テンプレート
例1
年齢45歳(ちゃんと視力が出る場合)
検査結果
完全矯正S-4.00で加入+1.50
視力1.2出る場合
手元約40センチの読書用眼鏡はS-2.50だとする
(この度数の場合25から40センチくらいまで裸眼でも見えるますが)
ここからお客さんの主訴(どこを見たいか?)を深掘りして提案をしていきます。
主訴 運転で使いたいパソコンも1本の眼鏡でしたい。
提案1
S-3.75ぐらいで視力1.2出れば
加入+1.25の遠近両用をすすめる
提案2
S-3.50ぐらいで視力1.0出れば
加入+1.00の遠近両用かリラックス系累進レンズすすめる
提案3
調節力を利用して
S-3.00ぐらいで視力0.7出れば
累進レンズでなくても中間用にほどほど両方見える眼鏡をすすめる
提案4
累進レンズに慣れられにくいのであれば提案1の遠方用を作って手元は裸眼で見ることをすすめる
といった4パターンは考えられるので、
「どこまでは見たくて、どこは妥協したくないか?」を聞くことが最重要です。
またKB(現用眼鏡)がある場合は、
年数と今の見え具合と今回はどうしたいか?
この3点をしっかり確認しましょう。
ポイント
使用年数が長いと(5年以上)目が度数に慣れてしまい
変えると違和感が強く出てしまう(特に60歳以上は変化に慣れにくいので注意)。
注意ポイント
検査時は新しい数値でその時だけ見えやすくなる現象が起きるが、
実際に出来上がったものを見ると前の眼鏡に目が合わせようとするので違和感が強く出て
見えなく感じる。
この変化に慣れるまでの期間を我慢できない年代だと処方交換が起きやすい。
遠近両用 失敗例と参考例
失敗例
65歳
KBがS-6.00加入2.50の遠近両用 使用歴6年
オートレフ値 S-5.00
完全矯正値 S-5.00 加入2.75 視力は1.0出る
手元40センチが S-2.25ぐらいの度数とする
主訴 運転する デスクPCや手元見えにくい 遠くは0.9見えている
KBが過矯正の為、遠方をS-5.00に下げて見たら
その時は遠くも近くも見えやすかった
しかし、いざ出来たら遠くが見えにくいという
これは長年慣れた度数からの変化に慣れるのが遅い為起こる現象です。
加入を安易に上げた処方はダメですが、
(S-6.00加入3.00みたいな)
⬇️参考例として過矯正を考慮して
S-5.50 加入2.50とかならまだ慣れやすいでしょうね。
また別提案ですが、
加入が+2.00を超えると遠近の歪みが強くなり(左右の視野が狭くなる)
PC向きではなくなるので、加入がすでに+2.00を超えて入っている人へは
かけ替えで中近両用か近々両用を提案しましょう。
中近両用 処方例
測定結果
65歳
KBが S-6.00加入2.50の遠近両用 使用歴6年
オートレフ値 S-5.00
完全矯正値 S-5.00 加入2.75 視力は1.0出る
手元40センチが S-2.25ぐらいの度数とする
主訴 かけ替えはできる デスクPCや手元見えにくい 遠くは0.9見えている。
この場合は運転しなくて良くて遠方距離が3メートルくらいでよければ、
S-5.25 加入2.25とかにすると視野も広くなるので良いかもですね。
また、遠くをもう少し下げてもいいなら-5.00 加入2.25とかでも
かなり見えやすくなるでしょうね。
注意ポイント
遠近使用年数が長いと中近にした時に遠方が物足りないと言われるケースがあります。
あくまで中近は手元重視なので、安易に遠方も見えるような提案は避けた方が無難。
近々両用の場合の処方例
測定結果
65歳
KBが S-6.00加入2.50の遠近両用 使用歴6年
オートレフ値 S-5.00
完全矯正値 S-5.00 加入2.75 視力は1.0出る
手元40センチが S-2.25ぐらいの度数とする
主訴 かけ替えはできる デスクPCや手元見えにくい 歩けなくていい
手元30センチくらいからモニター80センチくらいまで見たい。
近々両用は、まず手元の距離を合わせます。
この方の場合は手元30センチくらいと言ってくれているので、
近点 S-2.00の逆加入-1.50ぐらいになるでしょう。
(前後するようなら近点の度数か逆加入を少しずらす)
わかりやすくするために仮枠で1つずつ
手元の距離が合うまで近点を微調整する。
手元が間違いなく決まれば、あとは目標距離までの
マイナスレンズを入れて確認。
(近点の度数に-1.00か-1.50か-2.00のレンズを入れて目標を確認)
最後に近々の累進テストレンズを入れて確認して終わりです。
「どこまでの距離を見たいか」をしっかり聞いて逆加入を入れていくんだね〜
注意ポイント
モニターなどが1メートルを超える場合は近々ではなく中近の設計がオススメ。
近々で逆加入を入れすぎると(-2.00など)歪みが増えるので、近々本来の良さがなくなる為。
「近視度数測定テンプレート」最も多いパターンを紹介します まとめ
今回は近視処方について簡単な例で紹介しました。
⬇️今回のポイントをおさらいです。
お客さんは伝えてくれようとするあまりたくさんの情報を言ってくれることがあり
困惑することがありますが惑わされないようにする大事なポイントは、
今の眼鏡は何に困っていて、今回はどうしたいのか?
どこからどこまでが見たくて、どこは見えなくてもOKなのか?
ポイント
それによるメリットとデメリットを伝えた上で今回はどれを選びたいか?
を聞くことです。
これが今回お伝えしたかった傾聴式検査です。
ここをふわっと聞くと迷宮に迷い込みますので、いらない情報は聞き流して
聞くべき情報をキャッチするための質問の仕方を普段から意識すると
スピードと正確性が上がると思いますよ。
⬇️参考資料